本カメラの登場は１９８５年である。ちなみに世界初の量産ＡＦコンパクトカメラとしてＣ３５ＡＦ（ジャスピンコニカ）が登場したのが１９７７年である。本カメラの最大の特徴はレンズが広角側と望遠側に切り替えることができる「２焦点カメラ」であることだ。コニカの進化は世界初の量産フラッシュ内蔵コンパクトカメラのＣ３５ＥＦ（ピッカリコニカ）以降、徐々に進化していった。キヤノンのオートボーイのようなエキセントリックなラインではなく、かなり保守的なものである。ピッカリコニカの次がＡＦ化したジャスピンコニカ。次がＡＦ機構を精練化したＣ３５ＡＦ２。次が巻き上げをモーター化したＣ３５ＭＦ。そして本カメラである。こうして並べてみると、コニカの保守的でぶれない軸のベクトルを見ることができる。
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　本カメラの命名に有る「ＭＲ．７０」が最初は分からなかったのだが、これは望遠側が７０ｍｍなのに由来するようだ。ペットネームとしては「望遠王」を与えている。ちなみに海外では「Ｐｏｗｅｒ　Ｓｈｏｏｔｅｒ」を与えたようだ。
　２焦点はメインレンズを繰り出して内蔵のテレコンを装着することで実現している。多くの似たコンセプトのカメラが同様である。メインレンズは３８ｍｍＦ３．２で３群４枚。望遠になると７０ｍｍＦ５．８で６群８枚になる。この望遠側の７０ｍｍというのは、当時、この種のコンセプトの２焦点カメラの望遠側としては最も長かったようだ。キヤノンのオートボーイテレも７０ｍｍだが、あれは広角側が４０ｍｍだったから２ｍｍ物足りないということになったのだろう。まるで些細なことだが、本カメラは１９８５年に５５８００円もしたのだ。カタログの数字を信じたくもなる。これは拙僧の私見だが、キヤノンがオートボーイ３で飛躍的な進化を遂げ、ＡＦコンパクトカメラとしてはかなり完成度を高めたのに対し、コニカの進化は保守的なものだったからベースとなるカメラのパワーには差があったんじゃないかな。それでも、ともあれレンズは「ヘキサノン」だし、夢を見せてほしいものだ。
　シャッターは１／２５～１／２５０。勿論、プログラムＡＥオンリーである。フォーカスステップが不明なのだが、あまりモダンな数字は期待できないんじゃないかな。電源は単三電池２本を使用。これもオートボーイテレがリチウム電池２ＣＲ５なのに比べるとパワー不足を感じざるを得ない。現在の視点だと電池が１００円ショップの単三電池で済むのは嬉しいが１９８５年には１００円ショップは無かったし単三電池も安くは無かった。なにしろオートボーイ３にしろオートボーイテレにしろ自分で電池交換ができない仕様になっている。ブラックボックス化されたオートボーイよりも保守的な本カメラを選択する海兵隊員はいそうだ。
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　１９８０年代後半からＡＦコンパクトカメラがズームレンズを搭載するようになる。先陣を切ったのはペンタックスで、これで写りはイイがイマイチ不振だったオートロンで戦争をしていたペンタックスの劣勢は挽回する。ズームレンズを搭載するようになると必須的に廃れてしまう運命の２焦点カメラだが、当時は広角というか準広角を実現するのが精いっぱいの中、本物の広角レンズである２８ｍｍを搭載するキヤノンのオートボーイＷＴ２８やフジフィルムのカルディアトラベルミニが登場する。特に後者はコンパクトでよく写ると評判になった。
　本カメラも一応ヒットしたらしく、ジャンク籠での発見率も少なくはない。しかし、ピッカリコニカの時のようなヒット作に恵まれるのはビックミニの登場を待たねばならない。