２００１年４月、光学１０倍ズームレンズとＥＶＦを組み合わせたコンパクトサイズのデジカメのニーズをオリンパスがキャメディアＣ－７００ＵＺで開拓した。フジフィルムだって光学６倍ズームレンズを搭載したファインピクス４９００Ｚが手勢にあったが、なにしろ定価ベースで１２８０００円である。そう簡単に手が出せるものではない。キャメディアＣ－７００ＵＺは小ぶりの撮像素子だが、７５０００円なのだからぐっと手が届く。更に小ぶりな撮像素子に手振れ補正機構を組み合わせたルミックスＤＭＣ－ＦＺ１が登場したのは１．５年後である。まだまだ、コンパクトデジカメに手振れ補正機構を組み合わせるのには時間が掛かる。フジフィルムも旨味のあるジャンルだと思って廉価高倍率ズームレンズ＋ＥＶＦのコンパクト機として本カメラを送り出した。価格は７４８００円とキャメディアＣ－７００ＵＺに準ずるが、ボディは思い切った廉価ものである。同時期に常識的な光学３倍ズームレンズを搭載したコストパフォーマンス重視のファインピクス２６００Ｚが登場しているが、基本的なベースは同じものだと思える。
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　外観は有機的なフィニッシュだが、女性的なルックスともいえる。レンズのマッスを強調した押しの強いファインピクス４９００Ｚとは好対照である。ＥＶＦののぞき窓が大型で、フラッシュユニットが格納式でないのでキャメディアＣ－７００ＵＺよりも大柄に見える。
　レンズはライカ判換算で３８～２２８ｍｍＦ２．８～Ｆ３．０の明るい光学６倍ズームレンズである。これに２００万画素級の撮像素子を組み合わせる。いわゆるハニカムＣＣＤではなく、従来型の撮像素子を採用する。撮影画像はナチュラルというと現在の視点ではクエスチョンが付くが、Ｃ－７００ＵＺのノイジーな画像と比べると滑らかな諧調である。当時のファインピクスの傾向であり、おおむね好意的に捕えられていた。
　電源ボタンはプッシュ式である。起動は約２秒弱で標準的。但し、起動時はＥＶＦが優先となる。できれば電源オフの際にＥＶＦと背面液晶ビュワーの切り替えを覚えてくれればよかった。ＥＶＦはなかなか美しく、滑らかだ。この点ではルミックスＤＭＣ－ＦＺ１よりも良い物を使っていると思われる。同軸としてモード変更ダイヤルを配置する。モードダイヤルといってもスチル撮影モードと再生モードと動画撮影モードの３種類しかない。いわゆるシーンモードやマルチモードＡＥは非搭載だ。思い切ったコストダウンというか、ベースとなったカメラがオート専門の廉価な物なのだろう。ファインピクスは伝統的にオート撮影モードとマニアル撮影モードを搭載するが、マニアル撮影モードでもストロボモードとマクロモードと露出補正、ホワイトバランスしか設定できない。気になるのはマクロモードが階層メニュー下に潜っている。マクロ撮影をするたびに、メニューを起動するのは面倒だ。もっとも、本カメラのマクロ機能は広角側に限定され、撮影距離は１０ｃｍだから強い物ではない。
　残念なのがＩＳＯ感度が１００で固定なのである。これはコストダウン的にやりすぎだと思う。折角の望遠も手振れが気になる。確かにＣ－７００ＵＺの増感した画像はノイジーではあるが、大相撲名古屋場所のような屋内でもそこそこ粘るのはスイーティである。
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　撮影画像は当時のフジフィルムらしく、鮮やかである。ただ、ちょっと発色の誇張が強くポップでこってりした感じを受けるのだが、こういう色調に傾倒するフォロワーも形成していた。肌色はチューニングの成果でナチュラルに写る。
　そういうフジフィルムらしい美しさを描くカメラなのだが、レンズは兎も角、コストダウンの為か多くのカメラとしての機能を削っているのが気になる。特に感度がＩＳＯ１００固定なのが惜しい。明るい望遠レンズだって何かと感度を挙げたいときはあるのだ。
　綺麗な画像を描くレンズと安普請なボディが潔い、当時のフジフィルムらしいデジカメである。