本カメラの登場は２０１２年１０月である。その頃既に「インスタ映え」という言葉が生まれていたのかは知らないが、確実にコンパクトカメラの立ち位置が難しくなっていただろう。要するに写真はスマートフォンやタブレット端末で撮るものになっていたのだ。勿論、発表や公開はＳＮＳである。実際にプリントすると大胆な割り切りに驚くが、そんなことは「インスタ映え」の方々には大した問題ではない。プリントなんてしないしな。デジタル一眼レフやミラーレス一眼を使う方々だってロクにプリントはしないだろう。中には自宅のプリンターでプリントした「作品」を見せてくださる方もいらっしゃるのだが、大抵の場合はレンズやボディに比べるとプリンターへの投資の熱度は低く、プリントはそれなりだ。拙僧などは滅多にカラープリントなんてしないからキタムラに任せることにしている。
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　そんなレイトマジョリティの片隅に追いやられようとしているコンパクトデジカメだが、「やっぱり写真にする（プリントする）ならカメラじゃなきゃだめね」と気づく、感度の高い方も実際にいらっしゃる。そういう方々がミラーレス一眼まで行くかというとそうでもなく、ハンドバックに無理なく入るスリムなコンパクトデジカメが丁度いい。オリンパスが本カメラに与えたキャッチフレーズコピーは「タッチ操作とビューティーモードでカンタン＆キレイ」だ。ほぼ使い古されたカタカナが並び、オリンパスの熱意の無さをしみじみと感じるな。恐らく本カメラの想定購買層はＦ３と呼ばれる中高齢の女性だろう。
　これは推測なのだがＦＥ４０２０あたりの後裔機なのだろう。ちなみにＦＥシリーズのポリシーは「ファッション」＆「エレガント」である。だから「ＦＥ」なのだが、なんか最初から好きにしてくれって感じだよな。それでも、５００画素級時代から割としぶとく続いたシリーズである。ＦＥシリーズが終焉してしまったのか、本カメラのＶＨシリーズに世代交代したのか知らないのだが、多分誰も興味が無いと思うので調べないことにする。実売価格は１万円と言うから廉価カメラなのは間違いないだろう。実際にはもっと安かったのではないだろうか。
　仕様的にもＦＥ４０２０がライカ判換算で２６～１０５ｍｍ相当の広角に寄った光学４倍ズームレンズを登載した１０００万画素級撮像素子を搭載するのに対し、本カメラはライカ判換算２６～１３０ｍｍ相当の光学５倍ズームを搭載した１２００万画素級撮像素子を搭載している。双方ともライカ判換算で２６ｍｍから始まるズームレンズで本カメラの方が望遠が長くなった。撮像素子の２００万画素なんてのは誤差の範囲だが、一応進化したモデルと言っていいだろう。明確に違うのは本カメラの液晶ビュワーがタッチパネル式なのだ。今やスマートフォンの時代だからタッチパネル式でないと誰も振り向かないだろうな。
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　それで撮影画像なのだが大いに画像処理で弄った感じである。広角で撮ると大いに歪んで結像感も怪しい。レンズにパワーが無いのを画像処理がやり過ぎないようにナローにしているのだろう。発色も怪しいのだが晴天下だと、そこそこリアルな色が出る。しかし、ダイナミクスレンジがかなり狭いので明暗さがある場合には途端に馬脚を現す。それでも、スマートフォンの画像を印刷するよりましなのかな。デジ画像として見る限りは３００万画素級のキャメディアＣ－３０３０Ｚｏｏｍの方が遥かに発色のよい、安定した良好な画像を描くのだが、そんなことを言っても仕方がないな。
　ちなみに中高齢の女性層がスマートフォンを使いこなせなくて従来的なコンパクトデジカメを使うというニーズ設計は間違っている。中高齢の女性は巧みにスマートフォンを使いこなしており、Ｆ１Ｆ２の若い女性層がスターバックスの匂いのきついマフィンのインスタ映え画像をスマートフォンで撮るのに比べ、部隊はマチュピチュだ。オリンパスの市場認識が間違っているとは思わないが、コンパクトデジカメが生き残るのは本カメラの様な形態か、３６０度パノラマ撮影や完全水中カメラのようなトリッキーな分野しかないだろう。それも、殆どが動画（ムービー）デジカメに代わるだろうが。

　では、撮影結果（豊川おいでん祭り編）もご覧いただきたい。

（了：２０１８／２／９）

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