掃き溜めに鶴の言葉のようにジャンク駕籠には似合わない上品で美しい輝きをもったボディである。小柄なボディも目を引き、スタイリングにも異彩を放っている。この小さなボディに「４．０　ＭＥＧＡ　ＰＩＸＥＬＳ」の刻印は不釣り合いに見えるのだが、特筆すべきは単焦点レンズを搭載するのである。こういう割り切りは好ましいものである。単焦点レンズを搭載したコンパクトデジカメというと、旧世紀のものかおもちゃデジカメ以外には特別小型化されたカメラに幾種類か存在するのみである。キヤノンとしても質感を落とさないクラスレスな単焦点デジカメとして熱を入れたようである。
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　メインボディに新素材のマグネシウム合金を採用した他、サイドカバーにステンレス素材を組み合わせている。格別優れたのは表面仕上げで、塗の美しさを引き立て質感と艶やかさと輝きを実現している。これは実際に手に取ると分かる。ＩＸＹデジタル）というと、どちらかというと粗削りな印象だが、本カメラは一線を画している。手元にはプラチナシルバーとピアノブラックとパールブラックの３種類があるが、プラチナシルバーが並みのコンパクトデジカメと同様にボディに経年の傷が目立つのに対し、ピアノブラックとパールホワイトは輝きを残している。「ＩＸＹ　ＤＩＧＩＴＡＬ　Ｌ」の「Ｌ」は「ＬＩＧＨＴ」の「Ｌ」だろうが「ＬＡＤＹ」の「Ｌ」だとも思わせる。
　ボディマスはソニーのサイバーショットＵシリーズより半クラス上の程度だが、機能は標準クラスのＩＸＹシリーズと比べて全く省略されていないのがキヤノンらしい。受光素子は４００万画素級で大伸ばしでなければ印刷にも耐えられるだろう。肝心のレンズは非球面レンズ１枚を使用した４群４枚のライカ判換算で３９ｍｍＦ２．８である。シンプルな構成が嬉しい。寄りに控えめなキヤノンだがマクロモードで３ｃｍまで寄れるのは好ましいが、枝のような被写体には合い辛いようだ。焦点距離が３９ｍｍと標準よりなので切手サイズの被写体が画像一杯に撮影できる。ＡＦはキヤノン肝いりの５点ＡｉＡＦで１点の切り替えも可能。評価測光の他、中央重点測光、スポット測光が可能である。基本的にはオートカメラなので任意の露出の設定はできないが、スポット測光である程度の対応は可能だろう。感度はオートの他、ＩＳＯ５０から４００までを設定できる。
　液晶ビュワーは小さいがシビアなピント合わせをするカメラではないので必要十分だろう。見やすいものである。撮影時にはヒストグラムも表示する。個人的にはヒストグラムを確認して再撮影を行ったことはないので然程必要性は感じないが、必要な方には嬉しい機能であろう。
　記録媒体はＳＤカードである。ＩＸＹシリーズもＩＸＹデジタル３０からＳＤカードになった。これも小型化に貢献しているのだろう。バッテリーも従来のＩＸＹシリーズが使用しているものと比べると小型化している。拙僧の手持ちではこのバッテリーは癖があり、持つ個体と極端に持たない個体がある。キヤノンのバッテリーは後の薄型のもの以外は比較的に持つのだが、どういうことだろうか。
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　サイバーショットＵシリーズやカシオのＥＸ－Ｓ／Ｍシリーズなど、特異な小型デジカメが流行った時期があった。それらと比べると本カメラは小ささとしては特筆に値するものではないが、質感の高さと常識的な操作感覚、写しだす画像のクオリティの高さでは一歩上を担っていると思う。
　何しろ、単焦点のコンパクトカメラを操るのは楽しいものである。